はじまりはミステイク
「藤山のアホ!もういいよ。早く戻ろう。一華ちゃんの出番を見逃しちゃ」
「待って」
そう言った藤山に腕を掴まれた。
「写真撮ろう」
「へ?」
「ほら早く」
藤山がケータイを出してインカメにする。訳がわからないまま、藤山の隣に並ぶ私。
「ん?これでいいんだっけ?」
「藤山ー、私入ってないんだけど。貸して」
そして、藤山からケータイを取った私は、角度を調整する。
……う、藤山との距離近い。
「と、撮るよ」
カシャ
藤山とプリクラは撮ったことがあるけど、こんなに近い距離で撮ったのは初めて。それに、前髪立たせてて学ラン姿だから……だからドキドキするんだ。
このドキドキは今日だけ、だよね?
「おぉ、上手い。あまりいつも自撮りの練習してるの?」
「んなわけないっ。女子はみんなこうだよっ」
そんな言い合いをしていたから、藤山に怒っていたことなんて忘れちゃった。