はじまりはミステイク
「ケーキ食べよっ。イチゴ美味しそー」
「あたし、モンブランだ。ラッキー」
ケーキを食べながら他のお客さんの相手をする藤山をチラ見する。
あぁ、藤山だ。
なんだかんだ、来れてよかった。
「うわー楽しみっ!」
「観客多いな」
文化祭2日目。私は藤山と体育館に来ていた。目的はただ1つ。圭吾くんのバンドを見に来たのだ。
なんとか生徒達の間をくぐり抜けて、舞台に近い場所に行くことが出来たけど……少々舞台端気味だ。
「あと何分だっけ?」
「圭吾のギター楽しみだねっ」
近くにいた女子がキャッキャッ騒ぐ。
今聞いたように、圭吾くんは校内で割と人気のある男子なのだ。だから、ライバルが多いのは承知の上だったけど、呼び捨てなんてずるい。
「私は圭吾くんって呼んでるのになぁ」
「呼び捨てで呼べばいいよ」
「無理無理!しんぞー飛び出ちゃうっ」
「ふっ、何だよそれ」
「藤山には分かんないよっ。お、乙女心!」
分かるわけないよーと苦笑しながら、舞台へ視線を移す藤山。