はじまりはミステイク



泣くな、泣くな。


失恋しちゃうことが分かって聴くこのラブバラードは、胸が痛い。


だけど、圭吾くんの思いが溢れてるこの歌詞は、すごく好き。


曲の間奏に入った。圭吾くんが笑顔で客席を見ながらギターを弾く。


くぅー、カッコイイ。


そう思った時だった。





圭吾くんと、目が合った。


彼はふっと笑って視線を逸らした。


「藤山ぁ、見た?今の見たでしょ?圭吾くんと目が合ったよ」


「うん、見たよ。笑ってたね」


罪な男だね、圭吾くんって。


そんなことを思っていると、間奏が終わりそうになった時に、圭吾くんがマイクを手にした。


そして、歌ったんだ。






『君はこの思いに気づいてるかな?
鈍感な君だからきっと笑って終わりそうだね。
両思いの可能性は低いけど
もう少しだけ君の事を好きでいてもいいかな?』


気のせい、かな?


また、目が合った。



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