はじまりはミステイク
「ねぇ!今こっち見たよね?」
「見た見たっ。えぇ、もしかして私?」
キャッキャッ言う会話が聞こえて、小さな期待は小さくなる。
ははっ、もう勘違いさせないでよ。
ギターが上手いのは知ってたけど、歌も上手いじゃん。才能あり過ぎ。
ラブバラードが終わって、再び圭吾くんがマイクを手にした。
『えー、あーその、やべ超恥ずかしいんだけど』
カタコトな圭吾くんの言葉に、他の男子生徒からヒューヒューと冷やかしの声が飛ぶ。
「今のって好きな奴への告白!?」
『ちげーよ。あーでもそんなもんかもしれないです』
え?
思わず隣にいた藤山を見てしまった。彼も同じように私を見る。
〝冗談だよね〟
目を合わせて、お互いに問いているような感じがした。
『この会場に好きな人がいます』
圭吾くんの言葉に、えー!?っと生徒達からの声。
私は唖然とした。
圭吾くんの好きな人が……この場にいる!?