はじまりはミステイク
「まりりん、理科室行くよー」
「は、はぁい」
教科書を盾にして、目だけを教科書から覗かせて、キョロキョロしながら一華ちゃんの後を歩く。
「まりりん、普通に歩きなよ」
「無理無理っ。どこから敵の攻撃が来るか分からないしっ」
「敵も何も、現時点では圭吾くんがまりりんを好きなんてバレてないでしょ?」
「しーっ!声が大きいっ」
そして、人気がなくなった渡り廊下を歩いて理科室へ向かう。
「でもさ、まりりんは嬉しいでしょ?片思いしてた相手から告白されたんだよ?ビックリしただろうけど、喜びの方が大きいはず」
あたしも嬉しくなったくらいだからね、と一華ちゃんが笑う。
「うん。そうなんだよね。嬉しいんだよ。嬉しいんだけど……」
何でかな?
嬉しい気持ちはあるんだけど、何か納得いかないっていうかモヤモする気持ちもある。
「まりりん?」