はじまりはミステイク



片思いじゃないんだよ。


私も圭吾くんのことが……


「藤山ー、英語のノート見せてー」


「自分でちゃんとしなよ」


どこからか男子生徒と藤山の声が聞こえた。


藤山が近くにいる!?


そんな……この場面を、圭吾くんといるところを見られたくない。


「圭吾くん、ごめんっ。カレー残ってたから食べなきゃっ」


そう言ってその場から逃げ出した。


変な言い訳なんて通用するわけがない。なんで逃げたんだ!?って思ってかもしれない。


でも、あの場にいられなかった。


藤山に見られたくなかった。


藤山に、知られたくなかった。






「あ、おかえり」


食堂でさっきと同じ席で待っていてくれた一華ちゃん。


「カレー置いたままで……ってまりりん?」


「うぅ……」


一華ちゃんの顔を見て、声を聞いたら涙が出た。


不安とモヤモヤとまとまらない気持ちが抑えきれず、涙となって姿を現した。



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