はじまりはミステイク
「休憩!」
その掛け声を聞いてハッとした。藤山と圭吾くんの試合後、ボーッとしていた私。2試合終わっていたと隣にいた女子が律儀にも教えてくれた。
「あまり!」
誰かに腕を引かれて、そのまま道場から離れた場所へ連れて行かれた。
「試合、見てたよね?」
「うん」
俯きながら藤山の問いに答える。
「俺、勝った」
「うん」
「圭吾先輩に勝ったんだ」
「うん、知ってる」
ゆっくり顔を上げて藤山を見ると、少しだけ嬉しそうだった。
「勝ててよかったね」
本当の気持ちとは裏腹な思いを伝える。
「うん。今までもなかなか勝てなかったんだ。だから、すごく嬉しい」
嬉しくない。
そんな嬉しそうな顔なんてしないで。
私は嬉しくない。
「それで昨日言ったことなんだけど」
「分かってるから!」
少し怒鳴るように言ってしまったけど、止まらない。
「藤山と別れて圭吾くんに告白する。それでいいでしょ!」