はじまりはミステイク
でもね、去り際に私にだけ聞こえる声で言ったんだ。
『今までありがとう。頑張れ』
そんな言葉なんていらない。
だから、ココにいて。
傍にいて。
「それで話って?」
私の涙を気にしながら圭吾くんが尋ねる。
「うん。そのね、前告白してくれたでしょ?その返事をしてなかったから今からしてもいいかな?」
「あ、うん。どうぞ」
改まった圭吾くん。彼の真剣な顔つきに緊張する私。
「あのね」
ねぇ、藤山。
「私、圭吾くんとは付き合えない。ごめんなさい」
ごめん、藤山を裏切るよ。
「うん。分かった」
圭吾くんは小さく笑った。
「藤山と仲良くやれよ」
圭吾くんの言葉に俯きながら大きく首を振った。
「……った」
「え?」
「藤山とは、ダメになった」
それ以上、圭吾くんは何も言わなかった。ちょうど休憩時間も終わって、彼は私の事を気にしながら武道場へ戻っていった。