はじまりはミステイク
「えっ、いやいいよ!自分で」
「階段も降りるし重たいだろー?これくらい手伝うって。ほら行くぞー」
今までの私なら、こんなシチュエーション嬉しすぎて、心の中はパラダイスのはずだけど、今は……気まずさしかない。
「……」
「……」
ほら、会話がない。
話題が浮かばない。
はぁあ、早くこの空気から抜け出したい。
「なんで天木がそんな辛そうな顔してんだよ」
沈黙を破ったのは、圭吾くんだった。
「辛いの、フラれた俺なんですけど」
「あ、う、ごめん」
反射的に謝る私。
「それでもこんな風にチャンスがあると、まだいけるかな?なんて勝手に思ってんだけどな」
圭吾くんの言葉に返事が出来ず、そのまま職員室に着いた。英語担当の先生の机へノートを置いて職員室を出る。
「でも、覚えとけよ」
「え?」
「俺、諦めは悪い方なんだよ。だから、しばらく片思いさせてな?」
じゃ、と階段を駆け上がっていった圭吾くん。