はじまりはミステイク
「まりりん、私先に帰るね」
立ち止まったままの私に一華ちゃんがコソッと言って、先に靴箱へ向かった。
私の前に立っている藤山の目を見る。
「よ、ようっ」
「うん」
藤山に話しかける言葉がぎこちなくなってしまう。
「あ、その元気?」
「うん、元気」
スッと視線を逸らした藤山。
え?なんで……?
「圭吾先輩のことで有名になってるね。よかったじゃん」
少しだけ冷たく感じるのは気のせい、かな?
「なに、藤山怒ってんの?」
「怒ってないよ」
「怒ってるじゃん」
「怒ってない。じゃ、部活だから」
そう言って私の横を通り過ぎた藤山。
「じゃあね、圭吾先輩の好きな〝先輩〟」
あまり、じゃなくて先輩、なんだ。嫌味っぽい言い方するじゃんか。
「じゃあね!可愛くない後輩よ!」
私もそのまま靴箱へ向かい、プンスカ怒りながら家路へ向かった。
何よ。
仮にも元カノだよ!?
そりゃ先輩だよ!?