はじまりはミステイク
「はぁっ。はぁっ……」
道場には腰を下ろしている部員や水分補給をする部員の姿ばかり。
休憩中かな?そう思った時、水道場から声が聞こえた。
「マジで?藤山数学の小テスト満点だったの?」
「おう。先生にも褒められたよ」
「未だに信じらんなーい、あははっ」
壁に隠れて覗いてみると、剣道部数人とバレー部女子の集団の姿があり、その中に藤山がいた。
藤山は笑ってた。
あんなん間近で見たら、キュンキュンするよ。
だから、女子の方には笑顔なんて向けないで。
あぁー、また笑ってー。
彼女でもなんでもないから、この場から姿を出して物を言える立場じゃない。
だから、もどかしい。
だけど、本当は言いたい。
『藤山!なーに、他の子見てデレてんの!?』
って。
『そんな笑顔見せるなんて反則!アウト!』
胸を張ってそう言ってやりたい。