はじまりはミステイク
「おわっと……って、天木?」
圭吾くんだった。
「ここで何してんの?」
「あ、その、ギターの音が聞こえて軽音部かなと思って、ちょっと聴き入ってた」
「それなら中に入って聞けばいいのにー」
「い、いいよっ。練習頑張ってね!」
本当の本当はまだ圭吾くんと話していたい。だけど、他の部員もいるし、私の恋心がバレたら嫌だし……今日は我慢だ。
「お、おう。また聴きに来いよ」
「もちろんっ。ありがとうね」
そのままダッシュで昇降口まで駆け出した。
「仲良くなってきたけど、緊張はなかなか解けないなぁ……」
このままじゃせっかく覚えた英単語もパーになっちゃう。せっかく一華ちゃんに教わったんだし、勉強せねば!そのまま私は自転車で家路へと向かった。
「えっと、この単語の次はこの動詞がくるから……」
「違う。これだよ」
テスト前日。またしても放課後に図書室というシチュエーション。右隣には一華ちゃん。そして、今日は左隣に藤山がいる。テスト期間のため、藤山も部活が休みらしいのだ。