はじまりはミステイク
「ダメだ。わけわかんなくなってきた」
「大丈夫。少しずつ分かってきてるから。ね、まりりん」
日に日に一華ちゃんが優しくなってる。彼女曰く、私は褒めると伸びるとのことだ。
「あまり、それ1年の時の範囲じゃない?」
「え」
「こらっ、藤山余計なこと言わないで。まりりんは今一生懸命解いてる最中なの」
藤山の言葉に一華ちゃんが慌てる。
「じゃあ、藤山もこの問題解けるってわけ?」
「解けるけど、そこの先輩が怖いからやめとく」
「藤山、それでよろしい。それで申し訳ないんだけどさ、バイト先に忘れ物取りに行ってもいい?」
「へっ?一華ちゃん帰っちゃうの!?」
私は目を丸くして一華ちゃんを見る。
「とてつもなく分からなくなったら藤山を頼って。ただし、まずは自分で解くこと。藤山も甘やかさないでね」
冷ややかに笑う一華ちゃん。うう、藤山でさえも解ける問題なのに私は解けないなんて……。そして一華ちゃんはじゃ、と図書室を後にした。