はじまりはミステイク
「そ、んなに私に会えるのが嬉しいんだ?」
精一杯の照れ隠しの言葉を藤山へ向ける。
「まぁね。面白いことがなくちゃつまらないし」
「ちょっ、面白いことって何よ!!」
「そうムキにならなくても」
「そうさせてるのは誰よ」
「プラスに考えてもいいと思うんだけどな」
「どこが!?」
夏休みも、理由をつけなくても藤山に会えるんだ。それを心で唱えるだけで、胸が弾んでいるような気がする。
「ううん。気のせい気のせい」
「何が?赤点は気のせいじゃないでしょ?」
「余計なこと言わなくていいからっ」
夏休みは、補習から始まるから、すごく重い気持ちだった。
だけど、藤山のことを視野に入れると、その気持ちが少し軽くなった気がする。
まぁ、その点はちょっと感謝するし、ちょっぴりドキドキな夏休みが始まりそう……だなんて思っちゃってる私がいることも事実なんだ。