はじまりはミステイク
「圭吾くんは今日1人なの?」
「うん。いつもは友達とだけど、今日は予定合わなくて。剣道しなくなってからも、剣道部の試合はたまに見に来るんだ」
「そうなんだ。やっぱり剣道好きなんだね」
「まぁな。小学生の頃からやってたし」
「そうなの!?でも、なんで今は剣道してないの?怪我か何か?」
「んーまぁ、そんなもん」
今、何かはぐらかされたような……?
「来てくれてありがとうございます」
すると、再び背後から声がした。声の主は藤山。荷物運びをしている途中のかな様だ。
「おー。試合楽しみにしてるよ」
「圭吾先輩に見られてると思うと緊張しますけど、頑張ります」
ガシガシっと圭吾くんに頭を撫でられる藤山が、照れ臭そうに笑う。
「あまりも来てくれてありがとう」
「本当だよー。応援してるから勝ち上がってよね」
「なるべく長く試合するね」
そして、圭吾くんと私に一礼して走り去って行った藤山。そんな彼の後ろ姿を見送ってから、私と圭吾くんは先ほどの席へ腰を下ろした。