はじまりはミステイク



2階席から見えるのは、各学校の剣道着姿に身を包む選手達。円陣を組んでるところもあれば、ミーティングらしき光景も見える。うちの高校は今は見当たらない。


「ねぇ、圭吾くん」


「ん?」


「圭吾くんもさ、剣道着着てたんだよね?」


「まぁね。イキナリどうした?」


選手達を眺めていて思った。


藤山でさえ、剣道着姿はカッコよく見えるんだ。だから、圭吾くんの剣道着姿とか見たら、私鼻血出してるんだろうなって。


「剣道着姿の圭吾くんって、カッコ良かったんだろうなぁって思って」


「そんなこと言っても何もおごんねーよ?」


「そんなの狙ってないってっ」


笑いながら言い合う私達。だけど、私の心はあることだけが気になっていた。


「圭吾くん、聞いていい?」


「今度は何だよー」


「剣道、なんで高校ではしてないの?」


圭吾くんの笑顔が急に消えた。


……聞いちゃったらいけない質問だった、よね。


「んなこと聞いても、天木の得になることなんてねーぞ?」



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