はじまりはミステイク
「絶対特になる!圭吾くんのこと知りたいし、聞かないほうが後悔する」
意地になって言い返す。
言った後に気づいた。うわ、恥ずかしいこと言っちゃったなぁと。
それでも知りたい。
だって、私は知らない。
中学の圭吾くんを。剣道をしていた圭吾くんを。
「お前なぁ、言ったからな?」
「うん。言った」
だから、聞かせて。
圭吾くんは笑っていた。だけど、すぐに口を閉じて真面目な横顔が私の目に映った。
「俺さ、中3の大会で対戦相手を大怪我させたんだ」
え?
「その試合、結構そいつと競り合っててさ。意地でも勝ってやる!って思って、竹刀を思いっきり振り下ろしたんだ。でも、それがいけなかった」
圭吾くんは続けた。
「俺の面を受けた相手の奴がバランスを崩して、俺も一緒に倒れこんだ。それだけならよかった。だけど、そいつは足の靭帯を切って、左肩と左肘を骨折。それに、相手の竹刀がぶっ壊れて粉々になった竹刀の欠片がそいつの目や顔に飛んだんだ」