はじまりはミステイク
圭吾くんの視線は、体育館に入ってきたうちの剣道部へ向けられている。それでも、言葉は途切れない。
「それで試合は中断。もちろん、相手の剣道部や保護者からは大ブーイング。あそこまでやらなくてもいいだろ!?って。俺だってそんなつもりはなかったんだよな」
小さくため息をつきながら笑う彼。
「部員や顧問それに親は、俺は悪くないって何度も慰めてくれた。そりゃ、今まで相手に打撲や痣をつくってしまうことはあったし、俺だって同じくらい傷つくった。でも、この時は違った。頭ん中が真っ白になって、何度も目の前であの対戦相手の傷つく姿が浮かぶんだ。だから、逃げたって思われてもいい。俺は無理だと思った。ううん、俺が無理だった」
圭吾くんは教えてくれた。
初めて、両親の前で悔し涙を流したことを。
初めて、剣道が怖いと思ったことを。
「それから剣道部は辞めた。ちょうど引退の時期である意味助かった。まぁ、自分勝手だったけどね。どう?これが剣道を辞めた理……」
気がつけば、私は圭吾くんの背中を撫でていた。