はじまりはミステイク



「な、にしてんだよ、天木」


「わっかんないけど……うぅー」


そして、涙がこぼれた。


勝手に思い描いている、その時の圭吾くんの試合の情景。


負けたくない思いで相手に向かう圭吾くん。


相手と一緒に床に倒れこむ圭吾くん。


大怪我をする相手を目の当たりにする圭吾くん。


ショックを受ける圭吾くん。


そんな彼を思い浮かべると涙が溢れた。


「ちょっ、なんで天木が泣くんだよ」


「知らないよー。でも圭吾くんの代わりに泣いてんの。せっかく化粧したのに、ボロボロになっちゃうー」


「俺、泣いてとか頼んでねぇし」


そう言う圭吾くんだけどね、話してる時に目がうるうるなってたの知ってるんだからね。


そんな君を見ていたら、自然と涙がこぼれてしまった。これは本当なんだよ。


「お、俺タオル持ってねぇから、自分ので拭けよっ。バケモンみたいになるぞっ」


「わっわがっでる″ーズズッ」


すぐさまカバンからタオルを取り出し、涙を拭った。そして、タオルからちょこっと顔を出し、圭吾くんを盗み見する。



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