はじまりはミステイク
「好きなのに剣道しないの?」
私には圭吾くんの言葉が分からない。
「しない。今は軽音部でやりたいことも見つ」
「なんで?それって自分でも言ってたけど、逃げてるって思うよ。そう思われて当然だよ。なんで剣道に向き合おうとしないの?」
違う。
こんなことを言いたいんじゃない。
圭吾くんを少しでも励ましたかった。
それだけなのに。
「天木には関係ない」
藤山達の試合が始まる前、私は圭吾くんと気まずくなってしまった。
「私が100%悪いのは分かってる。でもモヤモヤするんだよー」
休憩時間。コソッとトイレに出てきた私。鏡に映る自分に向かって、独り言をブツブツ呟いた。
雰囲気が悪いまま、うちの剣道部の団体戦を観戦した。喜ぶところは一緒だったけど、他はお互いに沈黙だった。
そして、大きなため息をつきながらトイレを出ると、バッタリ藤山に会った。
「ねぇ、圭吾先輩と喧嘩したの?」
「なんで分かるの?」
「圭吾先輩といるのに、あまりがはしゃいでないもん」