愛されることを知らない孤独なお姫様
「千秋とお父さんは小さい頃からの許嫁同士だったんだ。

そうだなぁ...。
千秋が秋と同い年くらいの時、千秋も1度だけ外へ飛び出したことがあったんだ。」

「お母様も?」

「そうだよ。」

なんか...意外。

「深夜に外の世界を見てみたいって言って外へ飛び出した。
だけど千秋は街のことを全く知らない。
道に迷って狭い路地裏に入ってしまったんだ。

その時に強面の男が来て襲われそうになったらしい。
すぐに千秋のSPたちが気づいて助けたから良かったものの、もし一足遅かったらどうなっていたかわからない。」

そんなことがあったんだ...。

「希望はおしとやかで家から出るようなことは無いから安心してたのかもしれないな。
それに比べ秋は、小さい頃からやんちゃしてたから心配で仕方なかったんだろうな。」

そんなのは嘘だ...。
お母様が私の心配なんかするわけない。

「嘘なんかじゃないんだよ」

「え...?」

私の表情から読み取ったのか続けた

「千秋は子どもの頃にそんな経験をしてるから秋には絶対危険な目に遭わせないようにしてたんじゃないかな?
そんなことをしてるうちに距離ができてしまったんだろう...。

秋がいなくなったと報告を受けた時は大変だったよ。
あの子にもしものことがあったらどうしようって泣いていた...。

希望を失ってしまった今、秋までいなくなってしまったら千秋の心の支えはなくなってしまうだろう?」

「そんな...。」

「お母さんと話しておいで。ちゃんと話せば理解してくれるし理解できる。自分の思ってることを素直に言ってごらん。

そうすれば、きっとお母さんの心もわかるから。」

「わかった...。ありがとうお父様。」

はっきりいって心の整理はまだついていない

だけど、ちゃんと話せばわかるはず

「また今度来るね」

「ああ。また話そう」
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