愛されることを知らない孤独なお姫様
秋は闇の中を走っていく。


護衛もいない。車で送迎もなし。

自分ひとりで外にいることに感動する。


「街...。」


そんなことを思いながら走っていると街に出た。


でも何故か夜だというのに騒がしい


「ねーねー、まだかな?めっちゃ楽しみなんだけどっ!!!」

「私も!早く来ないかなぁ?」


誰か来るの?


ま、いいか。


それより、


「どこに行こう...。」


そんなこんなで歩き続けていると裏路地へ入ってしまった。


「暗っ...誰もいないし...。」


「おい。そこのねぇちゃん。」

「...」


誰かが誰かを呼んでいる。

「おいねぇちゃん。無視はひどくねぇかい?」

あー、無視されちゃってるんだ。
可哀想


ガシッ

「ちょっとそこのねぇちゃん?」


勢いよく肩を掴まれた


「っ!?私!?な、なんですか?」


え、呼んでたのって私だったの?


「いやぁーさ、こんな綺麗なねぇちゃんがひとりで歩いてたからどうしたんかなぁ?
って思って。
こんな暗い道ひとりで歩いてたら危ないだろ?」


いや、なんかあなたの方が危ない気がするんですが...

声をかけてきたのは長身でガタイがいいスキンヘットの男。
顔には傷がある。


「家まで送ってやろーか?」


「いえ、結構です。」

「あ、もしかして帰る家ない?
それかまだ帰りたくないとか?」

「...」


確かに帰りたくない。

初めて自分で自由という名のものを見に来たんだ。

ギリギリまで粘ってたい。

「ま、言いたくないこともあるようだから詳しくは聞かない。
とりあえず帰りたくないんなら俺についてきな。
無理強いはしない。
お前の意志で付いてくるか付いてこないかは決めろ。」


そういって男は歩き出した。


初めてだ...
私に選択権を出してくれたのは。


私の足は自然と男に付いて言ってた。


大丈夫かもしれない。
そんな淡い期待を抱いて。


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