セトモノのココロ
佐知江
宇都宮初16時04分。何度時刻を調べただろう。
20年ぶりの同窓会。都内に向かういい口実だ。
子供たちはかわいいが、東京生まれ、東京育ちの佐知江には、宇都宮は、ただの田舎にしか思えなかった。

実家が都内にあることも、学生時代からの唯一の自慢。下町の公団アパートだったが、どんな集まりにも、一番のりだった。

同級生だった夫は、宇都宮では稼ぎのいいほうだったが、事業が失敗して、今では自分の稼ぎまでちはあてにされる始末。
実家が貧乏でなければとっくに離婚だ。
ただ、それは今日はひたかくしにしなければならない。
「私は専務夫人なんだから!」
そういい聞かせて、再び時計を見直した。
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