記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
記憶や感情に触れてしまうと、時々現実との境界が分からなくなる。
突然現れ、入り込んでしまうのが、この力の嫌な所だ。
ーキィィッ
取っ手を回し、呼吸が整った所で、私は屋上へと出る。
「っ……」
扉を開けた途端、ピカッと太陽の光が私を包み込み、その眩しさに目を細めた。
その光から逃れるように、足を進めると、ブワッと風が私の短い髪とスカートを巻き上げる。
頭上を流れる雲の早さに、今日は風が強いんだなぁと思った。
『いつもここに来るの?』
彼はあの時、私にそう聞いた。
『うん、一人になりたくて。あなたは?』
『俺も。ここは……空が近いから……』
そう言って空を見上げた彼は、すごく清々しい笑顔だった。
『あの空の向こうには、俺たちには想像も出来ない、楽園が広がっているらしいんだ』
まるで、その視線の先に、私には想像出来ない楽園が見えているかのように。