記憶の中で生きる君へ、この空に誓う


「……………」


「静月、ほら……」


蒼大先輩は、私に缶ジュースを手渡す。

私はそれを受けとると、そっと頬に押し当てた。


もっと、冷静になれ、私……。


こんなんじゃ、もっと辛い記憶を見る事になったら、きっと立ち直れなくなる。


ー記憶に…捕らわれる。



あれから、蒼大先輩は私の手を引いて、屋上へと連れてきてくれた。


とっくに授業は始まっていて、初めて授業をサボってしまった。


蒼大先輩は、「いつも真面目に出てんだし、今日くらい良いだろ」って笑って、傍にいてくれてる。



正直、授業に出れる気分じゃなかったし、蒼大先輩の優しさに感謝した。



「静月、顔を上げてみろよ、綺麗な青空だぞ」


隣に座った蒼大先輩が、わざと明るくしてくれているのがわかった。


私は、蒼大先輩に言われたとおりに、青空を見上げる。

青く澄み渡って、泣きたくなるくらいに綺麗な空だった。


「………蒼大先輩」


話さなきゃ……蒼大先輩に、記憶の事。

梶 航平に、源先輩と秋乃先輩はイジメられていた。

源先輩は人殺しと呼ばれていたけれど、理由は分からない。





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