記憶の中で生きる君へ、この空に誓う



そして場面は変わり、廊下に立つ梶先輩が、悔しげにリビングを見つめている姿を見つける。


梶先輩、何して……。

不思議に思い、そっと梶先輩に歩み寄ると、そこから見えたのは…。


『兄の航平と違って、あなたは優秀ね、桔平(きっぺい)』


『志望校にきちんと受かるなんて、未来の委員長は桔平で決まりだな。それに比べて航平は、ワンランク下の公立校だなんて、恥さらしめ』



『あなたは、航平みたいに負け組人生を歩んじゃだめよ?』


『はい!!おかあさん、お父さん!』


両親に誉められている弟に、梶先輩は唇を噛み締めた。

その唇から血が滲んでいる。

それでも噛み締めた唇を離そうとはしなかった。


梶先輩………。


子供は、親の道具じゃない。


勉強が出来るかどうか、人より優れているかでなんて、その子の価値を決めるのは変だよ。








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