記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
『秋乃、源の為に生きてくれ。俺は、アイツの大切な人には、幸せになってほしいんだ』
『蒼大………。私、ずっと苦しかった記憶しか、思い出せなかった。だけど……忘れてた、私は、源といた時、すごく幸せで、好きって気持ちに溢れてたの』
秋乃先輩は、両手で胸を押さえて、目を閉じたと思うと、小さく笑みを浮かべる。
『悲しくて、もう会えないと思ったら、何も見えなくなってしまった。源がくれたのは、誰かを想う幸せな気持ちだったのに…』
『秋乃……そうだな、その幸せな気持ちを、忘れるな。秋乃を、きっと支えてくれる』
『そうだね……蒼大。源……私も、世界で一番あなたが好き。風は、あの空に登ったお日様まで、届くのかな……』
秋乃先輩は、遠い眼差しで、宙へと手を伸ばす。
『今でも後悔してる、だけど私……弱いままでいたくない。源みたいに、誰かを守れるくらいに強くなりたい』
『秋乃先輩……』
その瞳に、光が灯って、私は泣きそうになるくらいに嬉しくなった。
『俺たちが、秋乃を支えるから』
『はい、秋乃先輩は一人じゃありません』
蒼大先輩と顔を見合わせて、笑みを交わす。
すると、秋乃先輩は『ありがとう』と言って、泣きながら笑みを溢した。
もし秋乃先輩が、暗い記憶に囚われてしまっても……。
私と秋乃先輩で、その手を引こう、そう心に誓った。