記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
『○○前~、○○前~』
「降りるぞ、静月」
車内に停車のアナウスが流れると、蒼大先輩に手を引かれてバスを降りた。
外へ出ると、体にまとわりつく熱気に頭がクラクラとする。
蝉の鳴き声と遠くに見える蜃気楼が、さらに暑さを感じさせた。
「静月、頭暑くなってないか?」
蒼大先輩は、私の頭にポンッと手を乗せると、「アチッ」と言って苦笑いを浮かべる。
「帽子もないし……あ、これで良いか??」
「え??」
すると、ファサッと頭にタオルを乗せられる。
洗いたての、洗剤の良い匂いがした。
「倒れたら、大変だからな!」
「あ、ありがとうございます、蒼大先輩」
タオル被って歩くの、少し恥ずかしいけど、蒼大先輩の優しさと天秤にかけたら、間違いなく蒼大先輩の優しさを受け入れる。
私は蒼大先輩のタオルを頭に乗せて、笑みを浮かべる。
そして数分歩いた所で、私たちはようやく、源先輩の家へと辿り着いた。