記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
すると、ブオンッと、蒼大先輩の手は源先輩の体をすり抜けてしまう。
源先輩は、ゆっくりとその階段をのぼり始めた。
そして、『この階段をのぼるのも、今日で最後か』と源先輩が呟く。
「これは………記憶?」
それに、これが源先輩が死んだ日の記憶だと気づいた。
「静月、何で俺にも見えてんだ??」
「分からないです、だけど……もしかしたら、源先輩がそうさせてるのかも」
親友には、知ってほしいと思ったんじゃないかな。
私と蒼大先輩は手を繋いで、源先輩の後を追う。
『俺は……きっと誰の記憶にも残らずに、消えるんだ。それを、俺が望んだから……』
それは、親友や秋乃先輩を遠ざけ、もう自由だとお母さんに言った事だろうか。
そうだ、源先輩を忘れたくなるように、忘れてほしいと願ってしてきた、今までの行動の事だ。
ーズキンッ
だけど、その言葉とは裏腹に感じるのは……。
「悲しい、寂しい………」
『あぁ、やっと肩の荷が降りる……』
ーズキンッ、ズキンッ!!
「苦しい……まるで、どうしてこの世界では生きられなかったんだろうっていう……絶望?」
感じる感情は、言葉とは裏腹だった。