記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
『いや……何でもないよ。ただ、今度は、何を言われても、それが誰かを傷つける結果になったとしても、誰かを信じて、誰かを救える人間になりたいなって、思っただけ』
私の言葉を信じて、救いたいって、思ってくれていたから出た言葉なんだ。
そう思ったら、やっぱり我慢できずに涙が頬を伝って落ちた。
「源先輩は、私を救おうとしてくれてたんですね……っ」
「本当、優しいやつだよ、源は……」
泣き出す私の傍に、蒼大先輩が寄り添った。
『君は、特別なんだね』
『違う、異質なんだよ、私は……』
『いいや、少なくとも、君は俺にとって、今この瞬間、特別な存在になったんだ』
この時、私は源先輩の言葉の真意が分からなかった。
源先輩は自身の耳の銀のイヤーカフを外して、『なら、これを』と銀のイヤーカフを差し出してくる。
『え、どうして……』
『君は、触れた物の記憶を見る事が出来るんだろう。ならこれは、俺の傍にずっとあったモノだから』
そう、私はやっと、この銀のイヤーカフを託された理由に気づいたんだ。
「イヤーカフを通して、記憶に触れれば、いつでも源の事を覚えててもらえる……。大切な人との縁を切って、独りになった源は、静月の力の事を知って、静月に託したんだよ」
「だから、源先輩は……この後っ」
『君が覚えててくれ、その記憶の中に、君だけは…』
そう言って、私に銀のイヤーカフを渡したんだ。
私と彼との7、8分の会話、最初で最後の逢瀬。
私がポケットから銀のイヤーカフを取り出して、手のひらに乗せと、ピカァァッと、イヤーカフが光り輝く。