記憶の中で生きる君へ、この空に誓う


『俺も。ここは……空が近いから……』


そう言って空を見上げた彼は、すごく清々しい笑顔で、今思えば、消えてしまいそうな危うさもあったように思える。



『あの空の向こうには、俺たちには想像も出来ない、楽園が広がっているらしいんだ』
 

『へぇ……』


そんな楽園があったらいいのに……。


誰の目も気にしない、ただ平穏に過ごす事が出来る楽園が、本当にあったらいいのに。


男の子の横顔を盗み見ると、彼はまるでその楽園が見えているかのように、青空を見つめて、微笑んでいる。


『目、エメラルドグリーンなんて、すごいね』


『えっ……』


『そういう目って、オッドアイって言うんだよね。俺、初めて見たな』


彼は、驚くくらいに直球に、私のコンプレックスに突っ込んだ。


普通なら、気を遣って見てみぬふりをする。

実際に、そうやって遠目に不気味がる人が多かった。





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