記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
先月、この学校で一人の少年が自殺した。
原因は、誰にも分からず、イジメがあったとか、家庭が複雑だったとか……。
噂の一つ、流れてもいいはずなのに、まるで最初から″彼″が存在しなかったかのように、時は過ぎていく。
『君が覚えててくれ、その記憶の中に、君だけは…』
自殺した彼とは、なんの接点も無かった。
だけど、あの日、学校の屋上で彼に出会った。
最初で最後の逢瀬。
ーー本当に、光に溶けてしまったの…?
ーー私が見ていたのは、幻だった?
あまりにも、ここには″彼″のいた証が少ない。
空へと続くこの階段を一段一段昇る。
そして、上まで登りきり、屋上の取っ手に触れた瞬間ー。
『どうしてだよ』
頭の中で、声が響く。
次第に、世界がセピア色に染まり、誰かの記憶に触れたのだと悟った。