記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
ーシュンッ
伸ばした手は、男の子に触れる事は叶わず、通り抜けてしまう。
記憶の残像でしかない彼に触れる事は出来ない。
そんなの、分かってるよ……。
それでも、その肩に、背中に触れてさすってあげたかった。
そうでもしなきゃ、私まで苦しくて、どうにかなってしまいそうなんだ。
ーパツンッ
そして、そこで映像は途切れ、セピアの風景が、徐々に彩りを取り戻す。
もといた、屋上へと続く扉の前、私は取っ手を握っている。
静かな階段の踊り場に、私の荒く、乱れた呼吸だけが響き渡る。
「はぁっ、はぁっ……」
あぁ、胸が苦しい……っ。
人は、こんな痛みを知ってもなお、生きていけるの?
失った者にしか分からない痛みだ。
私は触れていた取っ手の感触を確かめるように、握ったり、開いたりを繰り返す。