雨宿りの星たちへ
私は、本当に臆病者だ。
臆病で、弱虫で、情けない奴。
─── あの日。雨先輩に、『一週間後に死ぬ』と言われた時、私は驚きながらも内心でホッとしていた。
ああ……それならもう、進路の事で悩む必要もないんだ、って。
自分の未来が見えないことに、これ以上、頭を抱える必要もないんだって、心のどこかで安堵した。
それは、自分が死ぬということをリアルに感じていなかったからなのかもしれない。
全て、雨先輩の悪い冗談だと思っていたからこそなのかもしれない。
それでもその中で、私は怖さや不安より先に、安堵したんだ。
自分の未来から目を背けて良い理由ができて、私は内心、ホッとした。
「……変わらないなんて、誰が決めたんだよ」
「……え?」
「変えられないなんて、誰が決めたんだ」
ふわり、と。風に吹かれて足元の落ち葉が舞う。
真っ直ぐな言葉は私の弱い心に突き刺さり、胸の奥を強く叩いた。
「ミウが、言ってることもわかるよ」
「…………っ、」
「頑張るのって疲れるし、頑張らなくて済むなら誰でもきっと、頑張りたくなんてない。そもそも無理に頑張る必要もないし、頑張ることが義務なわけでもないしさ」
そう言うと、カズくんは強く地面を蹴った。
一度だけ、大きな弧を描いたブランコ。立ち上がって器用に身体を揺らして勢いをつけたブランコは、高く、高く上がっていった。
「えっ……!」
その力強さに見惚れて、呆然としていた先。突然、カズくんの片足から空に向かって靴が放たれた。
その靴は、子供の頃とは比べ物にならないくらいに遥か遠くへ飛んでいく。
その行方を見届けてからカズくんへと視線を戻せば、片足だけでブランコを止めたカズくんが、満面の笑みを浮かべて私を見た。