雨宿りの星たちへ
手すりを掴んだままの手に、再び強く力を込めた。
ドクドクと、不穏な音を立てる心臓。
一体、どうしてこんなことになってるんだろう。
何も言わない雨宮先輩に、恐る恐る伏せていた瞼を上げて隣を見れば、ただただ空を仰ぐ横顔に、一瞬、見惚れた。
それと同時に、ふわり、と。
ムスクの香りが、踊るように宙を舞う。
「今日の放課後、雨が降るから、早く帰るか途中で傘を買った方がいい」
「……え?」
「きみは、ずぶ濡れで帰る羽目になる」
先輩の視線の先の空は相変わらず澄み渡るような青が広がっていて、雨が降りそうな気配もない。
朝に見た天気予報も、今日は一日晴れだと言っていた。