雨宿りの星たちへ
 


自動ドアを潜り、病院の中へと足を踏み入れれば独特の匂いが鼻につく。

視界に映るのは清潔感のある佇まい、車椅子に乗っている患者さんや数名の看護師さん、お見舞いに来たらしい人たち。

その人たちと擦れ違いながらエレベーターに乗り、4階のボタンを押した雨先輩の背中を、私はただただ無言で見つめていた。

一体、雨先輩はどこに向かっているんだろう。

『ついてきて』と言われたからついてきたけれど、理由を聞いても『それはついてから話す』と言ったきりだし、ここに来た目的もわからない。

……ううん、違う。目的はきっと。

多分だけど、雨先輩が向かっている先に私が言った『未来を変えるためのヒント』があるんだろう。

私の願いを叶えるために、雨先輩は私をここに連れてきた。

昼間の流れからそう考えるのは多分普通のことで、それ以外の何かがここにあるとは、今の私は到底思えない。

……もしもその予想が外れたら、その時は、さすがにちょっと、怒ってもいいとさえ思ってしまう。

 
< 123 / 230 >

この作品をシェア

pagetop