雨宿りの星たちへ
  




「ミウ、昨日は本当にごめんね。お母さん、結局帰ってくるのが遅くなっちゃって……」



土曜日の朝。

夜中に帰ってきたお母さんは、疲れているであろう身体を休める間もなく出勤の準備をしていた。

お母さんが謝る必要なんて、ひとつもない。

昨日は病院の近くであったらしい火災のせいで、急患で入ってきた患者さんが何人か重なったりと、色々あって帰りが遅くなってしまったということ。

そんなの、お母さんの責任じゃないし、お母さんは自分の職務を全うしただけだ。

高校生にもなれば、それくらいのこともちゃんとわかっているし、夕飯だって自分でなんとかできるから、そんなことでイチイチ怒ったりしない。

お母さんが自分の時間と身を削りながら、毎日頑張っていることだって痛いほど知っているから尚更だ。



「仕事なんだから仕方ないよ。私だってもう子供じゃないんだし、ご飯くらいは自分で用意できるから大丈夫」



言いながら、今日も玄関でお母さんの後ろに立てば、そんな私を見て靴を履き終えたお母さんが申し訳なさそうに眉尻を下げた。

それを見て、チクリと痛む胸。お母さんが、そんな顔をする理由も私は全部わかってる。

 
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