雨宿りの星たちへ
  





「じゃあ私、部活行くね。ミウ、また明日!」



片手をヒラヒラと動かし、颯爽と教室を出て行くユリの背中を私も手を振りながら見送った。

昨日、ハヤテくんに告白して見事に玉砕したユリは、雨先輩の言う通り笑顔で私のところに戻ってきた。

『今日はケーキのやけ食いだ!』そう言って、商店街のケーキ屋さんに行くと、二人で計8個ものケーキを買って食べた私たち。

ケーキを前にユリは終始笑顔を見せていたけれど、帰り道では時折悲しそうな表情を見せていたから、とても心配だった。

だけど、今朝会った時にはもういつも通りのユリで、落ち込むどころかスッキリとした表情をしていて……改めて私は、彼女の逞しさに心打たれた。



「……帰ろ」



放課後の教室で、独り言のように言葉を零すと鞄を持ち席を立つ。

遠くで、吹奏楽部が奏でる楽器の音がする。

その音に合わせるように風に揺れるカーテン、机の上に置き去りにされたノート。

重ねて聞こえるのは野球部の掛け声、遠くを走る電車の音、車の音。

思わず鞄の中から出したイヤホンをもう一度元の場所へと押し込めて、私は一人、昇降口へと向かった。

 
< 95 / 230 >

この作品をシェア

pagetop