圭哉くんは俺様且つ暴君。
教室の中でキャーキャーと黄色い声を上げるクラスメイト達には、やっぱり少しだけ優越感みたいなものもあるのは事実だけど、
この関係が"偽物"の今、1番近くにいるのに、1番遠いのは私な気がする。
それが余計に苦しい。
「け、圭哉くん!頭痛良くなった?」
しばらく歩いて渡り廊下まで来た時、やっと圭哉くんの足はゆっくりと動きを止めた。
「ん、あんなの寝れば治るんだよ。」
「そ、そっか…良かった!」
良くあるのかな、頭痛。偏頭痛持ちとか?辛いって言うよね。
「つーか、俺とお前は恋人で、みんなの前ではお互い思い合ってる設定だろ。
さっきみたいな時は、最初っから幸せだって話合わせときゃいいんだよ。」
"いいな?"
って、有無を言わせぬ物言いに、静かに頷く私。
「じゃ、」
「え…もう?……あ、じゃあね!」
"もう?"って、自分のバカ!何言ってんだ。
この気持ちは隠さなきゃ!誤魔化して!誤魔化して小春!…そう言い聞かせて慌てて圭哉くんに背を向けて、歩き出す。
圭哉くんは工業科棟。
私は普通科棟。
あーあ、あっちの棟には…私の知らない圭哉くんがいるのかな?工業科とは言え、女の子だっているし…。
やだな。
…って、何考えてんだろ。