クリア・スカイ
「……私も、知りたいです。彼女が何を悩んで、何に苦しんでいたのか。ほたるにしか分からないことを、知ることが出来るのなら」
「分かりました。もう暗くなって来ましたし、この続きは旅館で話しましょう」
「はい」
私と駆は柳さんの提案を受け入れ、旅館に戻ることにした。
海辺から旅館までの道はとても暗かった。外灯のほとんどない道を、自転車のライトだけを頼りに進む。視界がぐんと狭くなり、障害物にぶつからないように速度を落として走る。
この夜道は、私が自分で作った世界と似ているような気がする。真っ暗で出口がなく、光っているのは自分の命の灯だけ。
道だけでなく気持ちまでもが暗くなっていた時、後ろから穏やかな声が聞こえてきた。