クリア・スカイ
「真っ暗で怖いですけど、スリリングで面白いですねぇ」
柳さんののんびりとした口調は決まって雰囲気を和ませる。それだけじゃなくて、この真っ暗な道すらも明るく照らしてくれるような気がした。
暗い夜道のサイクリングは無事に終わり、私達は旅館に到着した。
到着すると、若女将をはじめとして、ゆかりさんや晶子さんも出迎えてくれた。いつもは出迎える側なので、なんだか少し照れくさい。
「柳様、陽咲ちゃんと駆くん、お帰りなさいませ。夕食は何時ごろにいたしますか?」
「ただいま戻りました。夕食は、今から一時間後でも大丈夫でしょうか?」
「かしこまりました。それまではゆっくりとお過ごしくださいませ。……それにしても、駆くんは砂まみれねぇ」
若女将は駆の足元を見ておかしそうに笑っている。他の仲居さんたちもつられて笑っていて、駆は顔を真っ赤にしていた。