クリア・スカイ
「旅館の手伝い? どうして?」
「前に優子さん言っていたでしょ。ママは忙しくて時間がないって。だからほたるも旅館を手伝えば、少しはママの役に立つかなって」
「…………うん、そうね。女将だけじゃなく、ほたるちゃんが手伝ってくれたら皆が喜ぶと思うよ」
「ホント? じゃあ、優子さんからママに話してもらえないかな? ママはほたるの話を聞いてくれないから」
僕は優子さんの目が赤いことに気づいていた。また、健気なほたるに言えないことがあるということも知っている。
ほたるが旅館を手伝ったくらいで、母親の心には何も響いてこないだろう。いまさら何も変わらない。それは石ころの僕からみても一目瞭然だ。
たぶん、その現実に気づいていないのは、ほたるだけだと思う。