クリア・スカイ
「おはようございまーす」
この時間に更衣室に行くと必ず誰かが休憩している。今日はベテラン仲居のゆかりさんがいた。
「ほたるちゃん、おはよう。毎日お手伝いして偉いわねぇ。でも、仲居と同じ更衣室でしかも作務衣に着替えるなんて、いいのかしら。ほたるちゃんは女将の娘でしょ。言ってみれば次期女将じゃない?」
「自分の部屋よりも更衣室の方が近くて便利ですから。あと、ほたるはまだ見習いなので、作務衣すらもったいないと思います」
「あらまぁ、さすがは澄ノ島の天使なだけあるわねぇ」
「やめてください、天使だなんて」
ほたるの美しさと性格の良さは大人たちの間でも有名だった。気がついたときには『澄ノ島の天使』と呼ばれるようになっていた。