クリア・スカイ

 テスト期間が終わり、ほたるの手元には採点済のテストが返ってきた。ほたるは頭が良いようで、どのテストも満点に近い。中でも英語は百点で、先生に褒められていた。


「旅館で働くには英語が必要」と優子さんから聞いていたため、特に英語を勉強していたのを僕は知っている。努力の成果だね、おめでとう、って褒めてあげたい。


 百点のテストを受け取ったほたるは、いつもよりご機嫌な様子だった。旅館に戻りロッカーで着替えを済ませた後、テストを手に持ってあの人のところに向かった。


 事務室の扉を開けると、書類の整理をしている母親の後姿が目に写る。事務室には優子さんもいた。


「ママ、聞いて! 英語のテストで初めて百点を取ったの」

 ほたるは、母親の背中に向かって声をかけた。百点のテストが見えるように両手で持っている。


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