クリア・スカイ
 
 そんなミーハーな話をしているうちに柳様の部屋に到着した。海堂旅館は和室が十五部屋ほどある。そのすべては家族用の広さであり、一人で使うにはもてあましそうだ。


「失礼いたします。柳様、お食事をお持ちしました」

「ありがとうございます。お入りください」


 部屋の中から聞こえたのは優しい男の人の声だった。

 私たちはお客様に了承を得てから部屋に入る。そして、正座をしてからゆっくりと襖を開ける。もちろん全てはベテラン仲居のゆかりさん主導で、半人前以下の私はただ隣で同じようにしているだけ。


「失礼します。今から夕食の準備を始めさせていただきます」

 正座をしたまま一度お辞儀をし、ゆっくりと顔を上げる。


 
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