クリア・スカイ

 あんなに冷たくしておいて、今は手のひらを返したかのように、ほたるにつきっきりになっている。

 一緒に泣いて、励まし合ったあの時間は一体何だったのだろう。信じていたものに裏切られたような気持ち。悲しくて、怒りがこみ上げる。


「俺、母親にあんな風にされたことがないから……ほたるがどれだけ辛かったのか、想像もできません」

 駆はすごく苦しそうな表情でため息をついた。私は駆の言葉に同調するように頷く。

 柳さんは、神妙な顔つきをしてしばらく沈黙していた。そして、次に彼が口を開けた時、私たちは彼の新しい事実を知ることとなる。


「では、この中では僕が一番、ほたるさんの気持ちが分かるかもしれません。なぜなら僕は、母親の愛を知らないので」

「えっ……」


「僕が島を旅している理由、言っていませんでしたよね。
――僕は母親を探しに、ここに来たのです」



< 219 / 318 >

この作品をシェア

pagetop