クリア・スカイ
それはきっと、あのネックレスの記憶を見たからだろう。ほたるがどんな思いをして、あの事務室の扉を開けたのか。どれだけの悲しみを背負って、二階に続く階段を上ったのか。
全てを知ってしまった今では、この場所に立っているだけで何かがこみ上げてくる。
「……なんか、この場所にいるだけでキツイな」
「うん、私もおんなじこと思っていた」
切ない思いを胸に秘めて、私達は事務室の扉を開けた。
部屋の中では若女将が一人で、事務仕事をしていた。
「あら、二人とも。今日はもう帰るの?」
「はい、今日はいろいろとありがとうございました」
「いろいろって……私は何もしていないわよー。あれ? 駆くん、浴衣のままね。そのまま帰るの?」
「……あ。つい、着替えるのを忘れていました」