クリア・スカイ
私も、若女将に言われるまで、駆が浴衣のまま帰ろうとしていることに気づかなかった。きっと二人とも、一気にいろいろなことを知りすぎたせいで、うまく頭が働いていないのだろう。
その結果、駆はまた若女将に笑われることになってしまった。……でも、駆はなぜか嫌ではなさそうだ。
「もう今日はそのまま帰ったら? 家も近いし。浴衣はまた今度返してくれればいいわよ」
「では、お言葉に甘えてそうします。また柳さんの部屋に行くのも照れくさいし」
「そうね。じゃあ、駆くんの服はこちらで回収しておくから。また取りに着てね」
「すいません、何から何まで……」
駆は若女将に何度も頭を下げていた。彼女はおかしそうにくすくす笑っている。その笑顔はとても温かくて、優しい。
いつもよりそう感じるのはきっと、ほたるに優しくしてくれた彼女を見たからだろう。