クリア・スカイ
 
「そんなんじゃないですよ。ただ、やっぱり誰かに似ているようで気になっただけです」

「それだけで緊張なんてしないわよー。私はてっきり、陽咲ちゃんに春が来たのかと」

「春なんて……私に来るわけないじゃないですか! さあ、早く調理場に戻りましょう」

「ええ、そうね。これから忙しくなるものね」


『陽咲ちゃんに春が来たのかと思って』

 ゆかりさんのこの言葉を聞いて、ふと現実に戻されたような気がした。よく分からない感覚に舞い上がって、初めての緊張に心が揺れていた。たぶん、自分でも気づかないうちに、新しい世界、新しい出会いを求めていた。


――でもそれは、今の私にはあってはならないことだ。



 
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