クリア・スカイ
三.もう一人の幼馴染。
「お疲れさまでした」
旅館でのバイトを終え、制服に着替えた私は旅館の裏口から外に出た。
夜の七時を回っているが外はまだ明るい。月や星はうっすらと見えるけれど、彼らの光が映えるにはまだ早いようだ。
裏口に留めてあった自転車を手で押しながら歩く。自転車に乗らない理由は特にないけれど、なんとなくもう少しだけ一人の時間を味わっていたいのだ。
外の空気を吸っていたい。今日あったことを頭の中で思い出しながら歩きたい。まだ夏を味わっていたい……。
こういう時間が私を〈社会の中の私〉から〈空野家の私〉に切り替えてくれるのだと思う。これは、自分でもうまく説明できないけれど。